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「DJ検定」と僕が始めるJDDAについて。

「日本DJ協会」が「DJ検定」なるものを始める。想像はしていたがこれ、思った以上に物議をかましているようで、僕や僕の周りの方々からも未だ「これってWatusiさんの?」みたいなトンチンカンなものから「ぶっちゃけどうなんですかこれ?」なんてストレート系まで連日届いて来ていて、まずは彼ら「日本DJ協会」の思惑は既に果たせた気すらしている。

そもそも「日本DJ協会」代表のDJ Dragonくんが協会を立ち上げたのはもう随分前の事で・・・2015年5月に声をかけさせて頂き渋谷Visionに200名以上、大阪でも心斎橋JOULEに100名強のDJに集まって頂いた集会で集まった皆さんから出た話や配ったアンケートからも

あなたはDJ協会が発足することを望みますか?
はい・どちらでもない・いいえ
149 / 16 / 0 (渋谷での回答)

という圧倒的な反応があったにも関わらず、僕が一気に協会作りに向かわなかったのは、実はそのタイミングでDragonくんは既に協会立ち上げに動いていたから。新たに複数の組織を作る必要は感じなかったし、彼が作る協会が希望者を受け入れ全国のDJ達を取りまとめてもらえたらと素直に思った僕は、発足に向かって動く事は辞めました。しかしその後、直接話した彼の考えるDJ協会のメンバーの条件は「プロDJ」との事で、何をしてプロと呼べるのかもファジーな状態の今の日本、それでは多様なメンバーは拾えないと考え、改めて個人的に多様さを含めた組織作りを模索してきた。しかし多くのキャリアあるDJ達と直接時間をかけ話し合った結果個人的に得た強い実感は(もちろん偏ったメンバーでしたがそれでも10名は軽く超える各ジャンルの強者)この国はまだまだそうした組織を作るには時期尚早との結論に勝手ながら至りました。沢山のファクターはありますが、要はまだまだ自分の事だけで手一杯というような事でした。

風営法は改正され、不完全ながらも合法的なナイトタイム・エンターテイメントの仲間に入れてもらえたクラブ業界。そうなるとそうした動きに経済政策の失敗を棚上げしつつも直接税を増税したいお上の意向/思惑もうっすらと流れて来て(そもそも風営法が改正されたのだって結果、経済発展を抑制している改善すべき法律の一つに入れてもらたから=経済のお話からなのでお花畑のような事では無かった)、当然予算も流れ始めてくる。週末に一部のお店が深夜営業するLive Houseもが事業団体を作り、ナイトタイムエコノミー議連のボードメンバーに参入し深夜エンタメを推進する観光庁始め国と話し合って行き、渋谷区がナイトメイヤー推進準備会を進めるとストリートダンスの方々から深夜を中心としたセキュリティの皆さんまでもが一気に協会を作り参加し始めた。でも協会さえ作れない、そもそも集う事が出来ないDJ達がそうした座組の席に座り、時に計算高くかつ未来志向で話し合い、業界の明日に必要な予算を取ってくるなんて事は銀河系の彼方の話(勿論そんな事がDJに必要かはさておきあくまで一般論)。そうした状況の推移をずっと目の前にして、ずっと自問自答していた僕が次第に思い描き始めた事は、予算が無くても達成可能で、かつ日本各地の現場と繋がっていなければ成し得ないSomethingだった。

その一つが以前SNSでもお伝えしたJapan DJ.net。日本中の多様なDJ達を地域やジャンルなどに分け、様々な形でソート可能なWeb版DJ年鑑作り。これもまずは様々の関係者の方々にお伺いしながら、相談しながらではないと、現場からと言う意味が薄いものになってしまうとの懸念から、立ち上げまで1年はかけようとじっくりじっくりとまずは身内、続いてSNS辺りからと説明しながらスタートしたが、思っていた以上にあっという間に沢山の質問/意見が返って来た。「DJを全て横並びにするなんてあり得ない。一体何考えてるんですか?」、「iFLYERからRAまで様々そんなのとっくにあるのになんでまたそんなのに登録しなければいけないんですか?」、「後に登録したDJ達の営業をかけてWebから来た仕事をハネるような形態に見えますが」等々。。。。

まぁ、何をやるのもなかなか大変な界隈です。一言だけ触れておくと基本的に僕は僕らの情報は財産だと思っています。ならばその財産を自分たちにとって意味のあることに使っていけたら、そう考えていますし、そもそも僕はこんな事でお金を得る欲も必要もありません。

また僕は風営法改正運動の為、仲間たちと立ち上げたクラブとクラブカルチャーを守る会(CCCC)も辞め、どこにも迷惑がかからずかつ自身の思うことで動く道を選びましたので(繊細な政治的な部分にまで働きかけて行っていたCCCCではメンバー誰か一人でも強い反対意見がある案件は採り下げることになっていた)、こちらも誤解の無きように。僕は既にCCCCのメンバーではありませんので僕の動きとCCCCは何ら関係がありません。

動いていく先にさらに緩くでも集い、少しずつでも発信していくというテーマに沿った、よりシンボリックなSomethingも必要なのではと考え、シンプルにこれまで無かった「ダンスミュージックの日」というものを申請し、時間はかかりましたが最終的にダンスミュージックにとってシンボリックな数字でもある、9/9を「ダンスミュージックの日」と制定してもらう事もこの8月叶った。

そしたら後は、意外と早かった。Japan DJ.net発信というかそうした集まりに流れで9/9にダンスミュージックの祭典をやろうと思った(実はCCCC時代にもダンスミュージックのアワードを開催したいと動いたが最終的に却下されていた)。長きに渡りこの国のダンスミュージック界の発展を支えてきた功労者/ヴェニュー/裏方であるオーガナイザーからバーテンダーまでを全国からお迎えし功労賞を授与。25歳以下のDJ/トラックメーカーそれぞれにブライテスト・ホープを選出し海外での音楽体験を副賞として授与。ダンスミュージックの歴史を作った多彩なアーティスト達によるライブ・パフォーマンスも・・・次々にアイディアは浮かび続けた。東京以上にダメージを負っている各地の功労者を一堂に招き、世代、地域、ジャンルを超えたイベントなんてどうだろうか。様々なツギへの活性化のきっかけが垣間見えてこないだろうか? そして単純に、例えば40周年を迎えたYMOのお三方にリッチー・ホーティンがあなた方の音楽に興奮し僕はこうした音楽を続けて来ました!なんて言いながら花束を渡す、そんな景色って素直に良い!と思ってしまった。

勿論そんな事がシンプルに、勝手にできるものではないですが、まずはそんな夢を見ながらこの国の真のレガシー作りとして2020年、オリパラ後の東京でそんなイベントを始めてみようと動いてます。ここまでの説明をこんな文章でできたとも思っていないので同様に説明行脚も続けます。

同意してくれる仲間達と話していくと勝手な夢想はさらに広がり1日では無くその週をTokyo Dance Music Week2020として1週間連日各地で様々なテーマでのカンファレンスやパーティが繰り広げられるのはどうだろう? そんな話にまで広がり、僕は今、JDDA(日本ダンスミュージック&DJアソシエーション)という組織を作り、動きの透明性を担保するためにも一般社団法人として歩き出そうとしています。

長々と、一体何を言いたいかというと。人は皆それぞれ、想いや正義があります。まずは自戒も込め、どうかその正義を押し付けたりしないでください。そしてどうかその正義の邪魔はしないでください。

そんなシンプルなお願い事です。そんな事を書きながらも、僕自身、深夜にこんな話をするとついつい自分勝手な正義を他人に振りかざしそうになっている事があり、そこに気づいた9月のある日から禁酒を始めた。少しでも高ぶったりせず、自分が冷静さを失わないように。

なので基本的には他人の正義には口出しませんし「DJ検定」に異議はありません。勿論カルチャー論等々以前に、検定のように、与える側と受ける側と言う構図が出来ると、当然権威主義志向になって行きやすいのは誰もが懸念する事でしょう。またそれを個人が商いのためでは無く、DJ協会というDJ達を代表する名称の団体が行う事に違和感を抱く方が多いのではと思います。風営法改正運動の中で一緒に動いて来た社交ダンスの皆さんから、80年代辺りから公的な施設から社交ダンスサークルの排除が始まり、ダンス教室も正式認定された講師でないと営業が難しくなり、結果認定資格を与えることが出来る団体とその他との軋轢が長く続き本当に疲弊して来ましたと言う話も何度も何度も聞いてきました。Dragonくんは頭の良い男だと思っていますので、誰もが簡単に想像するそうした道を歩む事なく、新しい形が生まれたら良いなと思っています。DJカルチャーは「多様性」や「共生」がテーマですから。後は異論を持つ、DragonくんのDJ協会が面白く無いと思った界隈の方が別のアクションを起こしていく、それが健全でいいんじゃ無いでしょうか。

僕個人は、DJに限らず音楽家は権威から一番遠いところに立つべきだと思っています。そこさえも考え方、自身の義は違うかと思いますが、アーティストとしてのDJ Dragonくんは、一部の、かもしれませんが界隈からのイメージは大きく損なわれたと思っています。それでも、それを押してでも彼は資産も時間も使い動いた。なので、僕からは何もいう事が無いのです。もう僕には聞いてこないでね。

僕は彼の正義とは違うもの、異なる義を持っています。だから反論はしませんが自分自身の義の為、違う形で動き出します。それだけ。

どのみちね、香港では世界の価値観の未来を託すような戦争が起きている、内戦が続くイエメンでは人びとは極限まで追い詰められている、国内でも日々の政治ごとだけでなく台風19号の被害に、その情報格差に沢山の地域が苦しんでいるそんな今、エンターテイメントは、人の前に立つ事で生業を立てていく僕らは、どうやって正気を保ち、たかだか音楽を続けていくのかを問い続けてい行く事と必死に戦い続けているのが正直な話。具体的な誰がどうなんて話よりも自分の義が、自分自身の納得が大切で、あれこれ人の事言うよりも力が必要な被災地に出向き瓦礫でも担いでくる方が心根の強度は上がりますよ。

ともあれ一般社団法人(現在準備中)JDDAの動き、そして東京ダンスミュージック・ウィーク2020、どんなメンバーでどんな内容のものになるのか、興味ある方はお楽しみに。勿論質問や一緒にやってみたい!なんてお話でしたらどのSNSのメッセージからでも喜んで伺います。