今夜はやっぱり、この方を紹介しておかないと。
Lizzy Mercier Descloux (リジー・メルシエ・デクルー)。
いきなりサービス・カットから入りましたが、このお方、ZEレーベルだけでは語れない80年代のフレンチ・シンガーで、リリースされたレーベルも多岐に渡っていまして、そしてそのご本人の印象も相当異なる写真が多いんです。
こんな時代(1st アルバムの頃)や
こんな時代・・・
はたまたこんなや
こんなんまで・・・
まぁ、女の人生色々です。。。。。
パリからニューヨークに渡り制作された、ボーイッシュなジャケ写真のデビュー・アルバム「PRESS COLOR」はZEレーベル自体もスタートした超初期、1979年の作品でした。独自の解釈による「スパイ大作戦」のテーマ「Mission Impossible」のカヴァーからPeggy Lee (ペギー・リー)で有名な「Fever」の改作「Tumour」なんてのまで、いかにもZEレーベルらしい、ある種70年代後期ならではの難解さをも持つ、一筋縄では行かないアルバムでした。そのインパクトある1枚であっという間に前述のCristinaと並ぶZEレーベルの二大歌姫と呼ばれるようになりました。そしてさらにユニークな事が、彼女はその後アルバムを出すたびに、音楽性をコロコロと変えていく(その録音場所/国まで、もっと言うとレーベルさえもが変わる!)という非常に不思議な個性を持つアーティストでした。
僕は偶然80年代初期に「PRESS COLOR」に出会ってしまい、そのエキセントリックでキッチュな歌声となんとも言えない・・・新鮮なんて言葉は似合わないのに、聞いた事の無い迷宮のようなオンガクに出会ってしまったような感触に興奮し、長い間愛聴盤になっていました。その2年後の1981年にリリースされた2nd.アルバム「MAMBO NASSAU」はまた打って変わって、バハマのコンパスポイントという当時のNew Wave連中からThe Roling Stonesまでが通った大人気スタジオで(80年代に数々の名盤を産み落としました)レコーディングされ、1st同様ポスト・パンクの香りこそ漂うものの、Lizzy らしい解釈のNew Wave Funkアルバムでした。Cool & The Gangの「Funky Stuff」のカバーなんてもぅ・・・・最高なので聞いてみて下さい。
Lizzy Mercier Descloux – Funky Stuff (1981年)
そういえばこのアルバム、リリース先もすでにZEレーベルではなくなっていて、Michael Esteban が新たに創設したレーベルITからリリースされました。なので日本でもリリースは日本コロンビアから。なかなか追うのが大変なアーティストでもあります。
1984年に今度はCBS Franceに移籍、3作目のアルバム「LIZZY MERCIER DESCLOUX」(再発モノはタイトルがZULU ROCKに変更されてました)をリリース。何とアフリカの民族音楽に注目、ムバカンガを取り入れたサウンドを展開してました!今思えばパリッ子ならではのミクスチャーっぷりでもありますが、しかし・・・驚く程早かったなぁ。
1986年にはさらにPolydorに移籍(笑)、4作目「ONE FOR THE SOUL」はジャズ界の名トランペッターChet Bakerまで招いたジャズ・アルバムでした!! (まぁ・・・雰囲気モノですが、やはりユニークでした)。
Lizzy Mercier Descloux – One For the Soul (1986年)
1989年のアルバム「SUSPENSE」ではNo Wave時代の盟友、MarsのMark Cunningham (マーク・カニンガム)と共にロンドンで制作。原点回帰と言える、ポスト・パンク的なアート・ロックとディスコ・ファンクのミクスチャーとも言うべきサウンドの作品でした。
大好きなジャケなのに大きなサイズの画像が見つかりません・・・
その後95年にアルバムを制作するもリリースには至って折らず、2004年に癌のため死去。47歳の若さでした。
時代を独自の感性でエキセントリックに駆け抜けて行ったNo Waveの歌姫、Lizzy Mercier Descloux。初期YMOの頃、坂本氏が好きだったというような話を聞いた事はありますが、日本ではその変わりすぎる音楽性もあり、非常にマイナーな存在だと思います。なんとも取っ付きにくいサウンドかとも思いますが、ぜひいつか一度彼女のアルバムに触れる機会を持ってもらえたら嬉しいです。僕は聞かずに死ねるかな一人だと・・・こっそり思っています。
今はただご冥福を心からお祈りします。