1980年前後のお話、UK、ロンドンでは異端だらけのNew Wave Bandだらけの時代。パンクでフリーキーでダビーな過激なバンドが沢山いました。The Pop Groupなんてのもその代表格。このバンドを語るとまた長い事になってしまうので、今夜はそのThe Pop Groupが解散し、Rip Rig & Panicという名前のバンドや、Maximum JoyやPigbagというバンドに分裂して行った頃のお話を。
Funkapolitan(ファンカポリタン)というバンドもそんな混沌アーリー80’sロンドンに生まれたバンドのひとつ。Rip Rig & PanicやPigbag等はいかにも熱く過激なロンドン・スタイルのNew Wave Funkというサウンドを奏でていたのですが、一方Funkapolitanはというと、August Darnellプロデュースの元、陽気なファンカラティーナ路線で、デビュー当時僕はロンドンのバンドとは信じられませんでした。何しろクリアでパキっとしたパーカッシヴなビートに禁じ手のスラップ・ベース、軽快/さわやかなギター・カッティングに、New Waveフレイバーがたっぷり振りかけられた独特のゆるさ(言ってしまえば80’s的ヘタウマなんですが)を持つラテン・ファンクってのが、ファンカラティーナの音楽でしたので、The Pop Group一派達とは正反対の音楽だったんです。
Funkapolitan – In the Crime of Life (1982年)
Funkapolitanのメンバー、Tom Dixon(トム・ディクソン)と言う男は、当時のロンドン・アンダーグラウンドの先鋭的なヒーローの一人で、不法ディスコをオーガナイズしDJをやっていたりしていた先鋭的なミュージシャンでした(後にはプロダクト・デザイナーとして有名になっていくというという、いかにも80年代らしい時代のキーパーソン)。そんな80’sなロンドンっ子がニューヨークならではのネジ曲がり方をしたプロデューサーであるAugust Darnellとなんで組んだんだろうって思ってました(後に知りましたが、実はKid Creole And The CoconutsもニューヨークでClashのオープニング・アクトをやってたり、そうした米英の繋がりも結構あったんですね)。でも今ではそんなロンドン・アンダーグラウンドの毒を持ったミュージシャンが奏でたラテン・ファンクだったからこそ、時代に支持されたユニークな華になったんだろうと思っていますし、チュニジア生まれでイギリス人の父とフランス人とラトヴィア人の混血の母を持つ異邦人、Tom Dixonならではのニューヨークとロンドンを俯瞰させミックスさせたサウンドだったのではと思っています。そしてそんな華も当時の多くのバンドがそうだったように、たった一枚のアルバムのみで(12インチは数枚リリースされていてその内容も◎です)、消え去りました。でももちろんそんな彼らの曲はガラージの名曲としてしっかりファイリングされています。
Funkapolitan – As The Time Goes By (Vocal) (1981年)
余談ですが、Tom Dixonの作品は当時シティ・サルベージと呼ばれていて、街中の鉄素材のガラクタをサルベージし、それを自身のアトリエで溶接して家具や彫刻を作ってました(80年代半ばには東京で個展も開かれてました。そういえば日本でもクマさんとよばれたゲージュツカが似たような手法で作品を作ってました)。Funkapolitanの活動後には、なんとイタリア・デザイナーズ家具の代表的存在、Cappellini (カッペリーニ) の家具をデザインして、アンダーグラウンドからいきなり桧舞台に立つことになりました。さらにデザイナーズ家具の名門Habitat (ハビタ) のクリエイティブ・ディレクターを務めたり、Artek (アルテック) のディレクターに就任したりと、立派なデザイン・セレブリティのひとりになっていきました。2000年にはそれまでのイギリスの産業に対する功績が認められ大英勲章を受章。2002年には「Tom Dixon ltd」を設立。独創的なミラーを使った照明シリーズや、1点物のアート作品に近い斬新なプロダクトを発表するメーカーのオーナーに。2006年には青山での建築プロジェクトでTokyo HIP sters Clubを手がけてもいます。色々と、恐るべき80年代。